人が作ったもの

古地図を見れば陸と海が絶えず動いているのがよくわかる 陸地が盛り上がったり沈み込んだり海の位置が変わったり 強固な岩盤だって大きな大陸だって動かないわけじゃない 6000年前には江東区はもちろん墨田区も葛飾区も足立区も そして草加市や川口市や越谷市やまでもが海だったという 気温が上がって氷河が融けて 海面が100mも上昇したのだ 1万8000年前には東京湾は隅から隅まで陸だったというし それよりも前には日本は大陸と陸続きだったみたいだから 将来の日本が動かないなどと思うのは科学的とはいえない 盛り上がったり沈み込んだり動きまわっている陸地の上に 橋やトンネルやダムや堤防や高層ビルや発電所など作って それでそれらがいつまでも壊れないで役に立つわけもなく それでも僕たちは陸地が動かないと信じているフリをして 何が起きても原子力発電所は絶対に安全だって嘘をついて 想定外の事故があるとそれを自分でない誰かのせいにする 作ったものはいつかは壊れて築いたものはいつかは崩れる そんなあたり前のことをみんなまるで知らないふりをして 今日もどこかで完成を祝い竣工式や落成式が執り行われる 神に感謝しても仏に祈っても作ったものはいつかは壊れる 構造計算をどれだけやっても築いたものはいつかは崩れる 完璧なことなどありえないし永遠のものなどどこにもない 人が作ったものなんかが 自然が作ったものよりも すごいなんてわけはない